『アルものがたり』
作 和平京子
<第一章>
むかしむかし、あるところに、むじゃきなこどもがくらしていました。そのこどものなまえは「アル」といいました。あるとき、アルはゆめをみました。ゆめのなかで、ひかりかがやくかみさまがあらわれて、こういいました。
『アル!、おお、わたしのかわいいこ。わたしはおまえをいつもみまもっている。おまえがほしいものはなんでもあたえる。みんなとなかよく、しあわせにくらしなさい。それがわたしのよろこびである。』
アルは、そのあたたかいひかりをあびて、なつかしいかんかくとともに、ひょうげんできないほどのしあわせをかんじました。でも、つぎのしゅんかん、アルはすこしだけ、むなさわぎがしました。
『ただし、ひとつだけいっておくことがある。きをつけていなさい。けっして、あくのみちにあしをふみいれてはならない。これからおまえにはいくつかのゆうわくがおとずれるが、けっしてまどわされてはならない。そのゆうわくは、いっけん、とてもすばらしくみえる。しかし、それらはまぼろしだ。つねにこころのめをさましていなさい。もしおまえがみちをそれるなら、そのときおまえは、わたしからのしあわせをうけとることができなくなり、じぶんをみうしなってしまうであろう。』
アルはここでめがさめました。
『・・・。』『ああ、かみさま・・・! わたしには、できるでしょうか。あなたにいわれたことを、まもれるでしょうか。でも、、、きっとできますよね! あなたをしんじます。あくのみちにまよいこまないように、きをつけます! ですからどうか、しあわせをいっぱいかんじさせてください!』アルは、しんぱいをはねのけて、こころのなかで、かみさまにこうちかいました。
<第二章>
しばらくして、アルは、がっこうにかようようになりました。
がっこうには、たくさんのこどもがいました。アルは、かみさまとのやくそくをまもって、なるべくみんなとなかよくするようにこころがけながら、しあわせにくらしていました。
そんなあるひ、あるこどもがアルのところにやってきて、こういいました。
『あいつのもっているペンを、ぬ すんでやろう。』
たしかに、そのこどもがもっているきれいなペンをみて、アルはとてもうらやましくおもいました。
『じぶんもあれがほしい・・・。』
しかしここで、アルはふと、かみさまのことばをおもいだしました。
『でも、、、かみさまは、”みんなとなかよく、しあわせにくらしなさい”っていっていた。。。”あくのみちにあしをふみいれてはならない”ともいっていた。。。もし、ペンをぬ すんだら、ぬすまれたひとはきっとかなしくおもうだろう。それはぜったいによくないことだ。これは、もしかすると、かみさまがいっていた、いくつかのゆうわくのうちのひとつかもしれない。 』
それでアルは、かたくけつだんをして、こういいました。
『いや、やっぱり、ぬすむのはよくないとおもう。じぶんにはつねに、いまのじぶんにいちばんふさわしいものがあたえられているとおもうから、たとえどんなものでも、それをたいせつにすることにするよ。』
アルは、とてもすっきりしたかんじがしました。そして、かみさまによろこんでもらえるようなりっぱなおとなになれるようにと、じぶんなりにいっしょうけんめいべんきょうして、がんばりました。
<第三章>
またしばらくすると、アルは、しごとをするようになりました。
しごとばには、たくさんのなかまがいました。アルは、かみさまからあたえられたしごとにかんしゃをしながら、なるべくみんなとなかよくするようにこころがけて、しあわせにくらしていました。
あるとき、アルはこんなゆうわくにかられました。
『ああすれば、うまくひとをだませる。おかねもちになって、いいおもいができるにちがいない。せかいはじぶんのものになる。』
しかしここでまたアルは、かみさまとのやくそくをおもいだしました。
『まてよ・・・、でも、、、かみさまは、”みんなとなかよく、しあわせにくらしなさい”といっていた。。。”ゆうわくは、いっけん、とてもすばらしくみえるが、それらはまぼろしだ”ともいっていた。。。そもそも、ひとをだますなんて、よくないことだ。だまされたひとは、きっとかなしむ。。。そうだ、もしかすると、これもゆうわくのひとつかもしれない。』
そこでアルは、つよくけついをしました。
『いや、やっぱり、ひとをだますのはよくないとおもう。みんなとなかよくくらすためには、じぶんがぎせいになるくらいのきもちがたいせつだ。なにかをするまえにはよくかんがえて、ほんとうにみんなによろこんでもらえるようなしごとだけをすることにするよ。』
アルは、こころにひがともり、めのまえがあかるくてらされているようなかんじがしました。それから、アルはまた、もっとかみさまによろこんでもらえるようなりっぱなひとになれるようにと、じぶんなりにいっしょうけんめいはたらいて、がんばりました。
<第四章>
さらにしばらくすると、アルは、とてもゆたかになり、じぶんがたくさんのしあわせにかこまれていることにきがつきました。
これまでアルは、かみさまとのやくそくをまもりつづけ、だれともたたかいませんでした。ただひたすら、せいじつに、こつこつとどりょくをつづけただけでした。アルは、”みんなとなかよく”というかみさまのことばをまもっていたので、とてもやさしくて、あいにあふれたひとでした。それで、アルもひとびとからとてもあいされ、そしてそんけいされていました。アルをうらやましくおもうひとはいましたが、なぜかだれもアルをおとしめることはできませんでした。
いっぽう、がっこうでともだちのペンをぬ すんだこどもは、そのご、そのぬすんだペンをべつのこどもにぬすまれたうえに、さらにじぶんのノートまでもぬ すまれてしまいました。また、おかねもうけにめがくらみ、ひとをだましていたしごとなかまは、けっきょくじぶんもべつのひとにだまされて、さいごにはすべてをうしなってしまいました。
あるよる、アルはまたゆめをみました。また、あのかがやけるひかりがあわられました。
『アルよ、よくやった。おまえは、ゆうわくにまどわされることなく、すべてをまっとうした。わたしはおまえを、こころからかんげいする。おまえのほしいものはすべてあたえる。なんでもいってみなさい。』
アルのこころが、すこしゆらぎました。
『なんでも、てにはいる・・・、さらになんでも・・・!』
しかし、アルはまたおもいだしました。
『”もしおまえがみちをそれるなら、そのときおまえは、わたしからのしあわせをうけとることができなくなり、じぶんをみうしなってしまうであろう”といっていた。。。』
アルは、おおきなことにハッときがつき、こうこたえました。
『わたしがほしいのは、、、あなたです。あなたという、あいです。あなたは、いきるみちです。あなたとともにあれば、わたしはなんでもてにいれることができると、よくわかりました。ほんとうに、、、すばらしいミラクルです。すべてはすばらしい! やっとかんじることができました。すべてはあなたであり、あなたのめぐみなのです! ああ、このわたしでさえも、あなたのあいのいちぶなのです!』
こうしてアルは、かんぜんにかみさまといっしょになりました。かみさまのまばゆいひかりのなかにとけこんで、えいえんのしあわせをてにいれました。かみさまはとてもよろこびました。
<第五章>
そのごまもなく、アルは、さらにだいじなことにきがつきました。
『そうだ、あいするみんなにこのことをきづかせてあげたい。なぜなら、がっこうのともだちだって、しごとばのなかまだって、ほんとはみんなひとつなのだから! けっしてきずつけあってはいけない。ひとをきずつけることは、すなわち、じぶんをきずつけることなのだから。。。すべては、あいによってこそ、いやされる。みんながほんとうにほしいものは、ほんものの「あい」だ! あいがあれば、ひとはなにひとつうしなうものはない!!』
そしてアルは、かっことしたけっしんとともに、あらたなたびにでかけていきました。しばらくして、アルはとてもおおきなしごとをなしとげ、さらにたくさんのしあわせをてにいれましたが、すべてをおしみなくひとにわけあたえることによって、ますますとはってんしていきました。
今日も、あなたと、あなたにつながるすべての人に、たくさんの幸せが訪れますように・・・ ☆
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